AIによって“思考停止モンスター”にされないために

僕はAIが好きだし、毎日のようにお世話になっています。
でも、そのAIとの会話の中で、どうしても好きになれないものがひとつあります。
それが、やりとりの最後に出てくる
「次はこれをやりますか?」
「他にお手伝いできることはありますか?」
みたいな“お節介な提案”たちです。
一見すると、すごく親切なんですよね。
こっちが何も考えなくても、「次の一手」を向こうから差し出してくれる。
特に「何から手をつけていいか本気で分からない」ときには、こういうガイドは本当に助かると思います。
でも問題は、「いつも」「勝手に」出てくることなんです。
こっちは、「ここまで考えたい」「今日はこのテーマを深掘りしたい」と決めているのに、最後に毎回「次のメニュー」を差し出されると、思考のハンドルを少しずつ奪われていく感覚があるんですよね。
僕がAIに望んでいるのは、
「勝手に話を広げてくる営業マン」じゃなくて、
必要なときだけ呼び出せる「ものすごく賢い辞書」です。
こっちから「他に案ある?」と聞くのはいいんです。
そのときに、いくつか候補を出してくれたり、「こういう切り口もありますよ」と教えてくれるのは大歓迎です。
でも、聞いてもいないのに毎回
「では次は○○を一緒に考えますか?」
「このテーマで記事構成も作りましょうか?」
と、勝手にレールを敷いてこられると、思考が深まる前に“散らかる”んですよね。
まぁ、いらないならスルーしておけばいいじゃん?って話なんですが、その文章を読むだけで、無意識に脳が疲労している感覚があるんです。
意志が強いときは、「いや、その話はいったん置いといて」と軌道修正できます。
でも、人はいつもそんなにシャキッとしているわけじゃない。
疲れていたり、迷っていたりすると、「ああ、それもいいかも」とつい乗ってしまう。
その結果、本当は「Aについて考えたかった」のに、気づけば「BとCとDの話」をつまみ食いしているだけで終わってしまう。
翌日になって振り返ると、「で、結局自分は何を決めたかったんだっけ?」と、肝心な問いがぼやけている。
最近よく見かける“AI構文”っぽい投稿や記事も、このあたりが関係している気がしています。
- 自分の中で問いを絞りきる前に
- AIから出てきた提案をそのまま広げて
- きれいにまとまった文章だけが先に完成してしまう
中身の濃さより、「一応それっぽく形になった感」のほうが先に来てしまう。
でもそこには、自分の頭で何度も噛み直した痕跡や、「それは違う」と削ぎ落とした行間があまり見えないんですよね。
決して、AI側の工夫を全部否定したいわけじゃありません。
「次の一手を示してくれるAI」が必要な人も、たくさんいると思います。
ただ、少なくとも僕は、
「次に何を考えるか」
「どこまで深掘りするか」
この主導権だけは、自分で握っていたいタイプ。
だから、AIと話していて「勝手に話を広げてきたな」と感じた瞬間に、一度そこで区切るようにしています。
「今日はここまででいいです」
「今の話だけを、もう少し深く一緒に見直して」
と、自分のほうから範囲を指定し直す。
そのうえで、「他に案が欲しい」ときだけ改めてこちらから頼む。
AIに対してちょっとわがままに見えるくらいでちょうどいいのかもしれません。
道具や機械に気をつかうのもいいですが、それで自分が疲弊してしまっては本末転倒です。
AIの提案力や親切さそのものが悪いわけではなくて、
「いつの間にか、そのレールの上でしか考えなくなっている自分」のほうを、僕は一番こわいと思っています。
いわゆる思考停止です。
だからこそ、これからもAIにはどんどん助けてもらいながら、
- 問いを立てるのは自分
- 深掘りするかどうか決めるのも自分
- 話を終わらせるタイミングも自分
この3つだけは、手放さないようにしていたいな、とあらためて感じています。
そして、AIが“思考停止モンスター”を量産してしまう日が来ないことを祈るばかりです。
あなたは、どう思いますか?
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ちなみに、実現するかどうかわからないですが、開発者へこんなフィードバックを送りました。
【要望】作業リズム保護のための「受動モード」実装。AIの「お節介な提案」が人間の思考のリズムを分断するノイズになっています。質問にのみ答える「辞書モード」と、提案を行う「ナビモード」の切り替えを要望します。主導権をユーザーに返す設計への改善をお願いします。
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